【ネタバレ有】『ベアトリーチェ・チェンチの肖像』作・演出の田尾下哲さん 演出スクリプト前代未聞の大公開!

ベアトリーチェ・チェンチの肖像

『ベアトリーチェ・チェンチの肖像』
演出スクリプト前代未聞の大公開!
そして、作・演出の田尾下哲さんより特別コメントが到着しました!

この演出スクリプトは、4月21日から幕を開ける、映画監督の紀里谷和明さんと立ち上げた劇団THEATER LOVの第2回公演のものです。
 
そもそも、公演前にオリジナル戯曲の台本を公開し、しかも演出プランを公開することはあまり例のあることではないと思います。物語の展開を楽しみになさっている方にはネタバレになるものでもあります。それでも今回、演出スクリプトを公開させて頂いたのは、この戯曲が16世紀のイタリアを舞台とした史実の物語を題材にしているとはいえ、全くオリジナルの展開をしている戯曲であり、これまで20世紀の劇作家であるアルトーやモラヴィアといった劇作家が同じ題材で書いた『チェンチ一家もの』とは違う内容であることを知って頂きたかったからです。もちろん、これを事前に読んで頂かなければ分からないものではありませんし、セリフの変更なども手書きで書き込んであるので非常に読みにくいものになっていると思います。ですが、この試行錯誤の跡こそ、オリジナル戯曲を世に出す時の葛藤の跡であり、そのような過程をも創作の一つとしてご覧いただけたら、と思いました。
 
また、右側に書かれているのは俳優の演技、動線についての記述です。これを、スクリプトと呼びますが、このように演出プランを舞台の平面図にキャラクターを記号で書き(例えば、フランチェスコ役は、「Fr」という記号で表し、俳優の背中の面を一本線で書き、身体の向いている方向を表しています)、稽古が始まる前に演出の設計図を記します。実際には自分で身体を動かし、ペットボトルなどを人に見立てて動かし、舞台図面をにらみながら、そのコピーの上に動きを書き付け…という過程があるのですが、その逡巡を経た後、今回の演出はこのようにしよう、と決めた設計図が右側に書いてある図なのです。
 
ですが、もちろん俳優と稽古場で行われる作業は、この演出スクリプトをなぞることにはなりません。最初の演出説明では、このプランを俳優に伝えることになります。ですが、稽古が始まったら、それが実際に機能すればそのまま進みますが、うまくいかなかったり、実際に俳優と稽古をするうちに、より良い表現が見つかれば、どんどん修正していきます。そもそも演出スクリプトを書いている時点で、随分と前の場面に戻って、それ以降の演出スクリプトを全て破棄して、新しい展開に変えたものもありました。実際の稽古を経て、このスクリプトから大きく展開が変わった場面も少なくありません。
 
ドラマは稽古場で生まれるものです。機械的に振付をするように、動きを決めきって俳優に伝えて物語を物語れるものでもありません。しかし、未だ稽古が始まる前、このような演出スクリプトを作りながら演出プランを練ることは、自分のアイデアを書き付けることが出来るだけでなく、自分の中のイメージもより具体的にわき上がります。実際にこのように記述することが出来なければ、どうしてもその時に生まれたファンタジーはどこかへ飛んでいってしまって、本人さえ忘れてしまうものですし、前の場面に戻って見直すことも難しくなります。
 
演出スクリプトは、師匠であるドイツの演出家ミヒャエル・ハンぺ先生から習いました。そして、新国立劇場や、その他海外の劇場で、様々な欧米の演出家の助手をしながら、また、同僚やバレエのノーテーションといわれる踊りの記譜法などを参考にしながら一番有効と思われるシステムを考え、現在使っています。ただ、演出スクリプトを作成する演出家ばかりではないですし、稽古場で起きることを全てと考え、事前に準備をしない演出家もいます。ですが、私が学び、実践している方法ではこの演出スクリプトはとても有用で、オペラ、ミュージカルの場合でも、芝居同様このような記譜法を用いて演出を考えています。
 
自分の演出スクリプトを一部公開することはこれまでもありましたが、『ベアトリーチェ・チェンチの肖像』が完全オリジナル戯曲であること、そして、この作品が100年先にも上演されうる作品となるようにこの8年間磨き上げてきた過程の一部を、4月21日の初日を前にして公開させて頂けたらと思い、公開させて頂きました。
 
観劇後にご覧頂き、どのような意図だったのかをご確認頂くことも良いかもしれませんし、観劇をするかどうか迷われている方がご覧になって、ご興味をもてるかどうかの判断材料にして頂くのも良いかもしれません。いずれにせよ、ネタバレになることを承知の上で公開させて頂いたのには、この私の演出スクリプト、そして戯曲そのものを事前に知って頂いても、俳優達の描く生きたドラマが損なわれることはない、それだけの作品になっている、と信じているからです。これから、どのようにこの作品が発展していくかは未だ分かりません。しかし、私たちカンパニー一同、『ベアトリーチェ・チェンチの肖像』という作品の完成形をもうすぐ皆様にお届けできる喜びを噛みしめながら、最後の瞬間まで、より良い舞台になるように努力して参ります。是非4月21日から23日の3日間、6回しか公演がありませんが、その完成を見届けいただけたら、と思います。どうか、よろしくお願いいたします。

 

2017年4月17日 田尾下哲

 

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