『マーシー・シート』三木眞一郎インタビュー

The MERCY SEAT

『マーシー・シート』三木眞一郎インタビュー

2001年9月12日、9.11テロ事件翌日のアパートの一室。テロの日に密会していた不倫関係の男女。 女はアビー。キャリアウーマンにして出世街道まっしぐら。 一緒にいるのは一回り程年下で、ビジネスマン、自分の部下であり、恋愛関係にある男、ベン。アパートの一室を舞台に、静かな室内での男女の愛と葛藤を描く2人芝居『マーシー・シート』。
今回、日本初演となる本作品は、女優・名取裕子と声優・三木眞一郎の豪華異色顔合わせでも話題になっている。
今回は、日本でいま一番セクシーな男性声優、ベン役の三木眞一郎さんに作品の役作り、見どころなどについて語ってもらった。

「全ての流れが出演に向けて後押しした」

―― 声優さんの舞台への出演が、ストレートプレイも、2.5次元も含めて、ここ2・3年活発になってきています。全般的に見ると、アクション色の強い活劇的なものが多いのですが、今回ストレートプレイ、それも1幕で非常にセリフの分量が多い2人芝居に挑戦されるきっかけは、どういうところにあったのでしょうか?
三木: 僕の舞台への出演は、2009年に扉座の横内謙介さん演出で『乱童』という舞台をやる機会があって、そこから舞台やリーディングにお声をかけていだだける機会が増えました。そんな中で、青井陽治さんや岡本さとるさんの朗読劇にお声かけしていただいたのが、今回制作のアーティストジャパンさんです。
僕は、年末年始は毎年海外に行くんですが、今年の年明けに帰ってきたら、ドキドキするような留守番電話が入っているわけですよ、弊社部長から。「ご相談したいことが……」って。何だろうってドキドキしながら電話したら、「こういう話が来ているんだけど」っていうことで今回の出演のお話をいただいたんです。迷いましたね。リーディングではない、それだけでハードルは高いんですが、稽古も時間もあまり取れないということでしたし。でも、制作から一番最初に、男では僕の名前を出していただいたそうなんです。僕自身は、プロデューサーさんの前では朗読劇しかやってないですから。それでもストレートプレイの舞台に声をかけていただけたことは嬉しかったですね。
―― 決断したのは、ご指名だったのが大きい?
三木: そうですね。結局僕がやらなかったら、誰か他の方になるわけです。僕の知らないところでキャスティングが外れるのはいいけれど、自分で断るっていうのは、どうかなって思うんです。あと、今回の他にも色々お声かけいただくのですが、なかなかスケジュールが合わなくてダメなことも多いんですよ。だから今回は、スケジュールが全部クリアになったのも大きいですね。基本的に僕は声優なので、声優のコアタイム優先です。舞台をやるために後で別録りとかは、なるべくしたくないんです。そうじゃないと本末転倒になってしまうので。その上で、可能なスケジュールだったらっていう返事をお返ししたところ、できますよってことでした。
―― じゃあ、スケジュールであったり、お声かけしていただいたことであったりと条件がそろって今回出演されるわけですね?
三木: そうですね。あと、かなりのウェイトを占める部分が名取裕子さんですね。女性の方に対して失礼な言い方かもしれませんが、大先輩でいらっしゃいますし、共演したくても、映像であれ舞台であれ、同じ空気を吸える機会がそうそうはありませんから。これはチャンスなんだろうなと思いました。

「名取裕子さんは大変魅力的な女優、共演するのには勇気がいる」

―― 今、名取さんのお名前が出たので、お聞きしようと思ったのが、今、三木さんがおっしゃっていたように大先輩ですよね、それで、また魅力的な女優さんでもありますよね
共演されることに対してどのように感じていますか?
三木: これは……何を言っても失礼になりそうだけど、やっぱり怖かった……いや、今でも怖いですよ。何か言われるとか、そういった部分ではなくて、お芝居をずっと続けていらしたから、今の名取さんがあるわけで、そこに、基本、声を中心にしていて、まだ舞台芝居のキャリアがあまりない僕が、一緒の舞台に立つわけです。それって、声をかけていただいたからOK、って簡単にいけるわけじゃないですよね。それは3年半前にやった『オリビアを聴きながら』っていう舞台でもそうだったけど、舞台を中心に活動している方に対して失礼があってはいけないし、餅は餅屋というか……意識的か無意識かは別にして、テリトリー感というのはあると思うので、やっぱり敬意をもって接していかなければならないなと思っていて、そういった部分も含めて、勇気がいりますね。
―― 共演者としてチャレンジすることへの勇気っていうのはあると思うんですけど、名取さんは、非常に魅力的な女優さんですよね?
三木: それはもう、ものすごいですね……当然大人でありつつも、少女っぽいところであるとか、でも、ちょっとおっちょこちょい……みたいなキュートな部分だったりとか、いろんな面をお持ちの方で、とてもとても素敵な方だなと思っています。

「90分を超える一幕芝居。稽古の中で色々見えてきた」

―― 今回、非常にボリュームのあるお芝居ですね。台本拝見していて、120ページ。二人で延々ですよね。このお芝居の上演時間はどのくらいですか?
三木: あまり動かずに読み合わせして、現状95分くらいです。
―― じゃあもう、暗転するくらいで後は延々掛け合いなんですか!
三木: 暗転も何にもないんですよ。一回舞台に明かりが入ったら、最後までいきます。
―― じゃあ、ずっと90分以上しゃべりっぱなしの掛け合いですか。非常に過酷な……
三木: 二人芝居なので、本読みをやる時も、途中で間違っても戻しようがないから、始まっちゃったら最後まで行くんですよ。
名取さんと初めてお会いして、最初の読み合わせが終わったときに、2人で何となく顔を見合わせて、名取さんが「これ覚えるのよね?」っておっしゃったんですよ。僕の方も「はあ、そういうことみたいです……」って話になりましたね。
―― いま読み合わせをしながら、呼吸を合わせていくような稽古になっているわけですね。台本だけ見ていると判らない部分がどんどんやり取りの中で立体的になっていくと思うんですが?
三木: 最初台本をいただいた時に、割と景色が浮かびにくくて、どういう景色なんだろうって思っていました。本読みで声を出して、動かないまでも掛け合いをしていくと、色々な絵が見えてくるようになって、それが台本を読んでいるときに頭の中でムービーみたいにシーンが動き始めると、ちょっと楽になるんですよ。その上で、セットをどういう感じにするとか、衣装をどういう感じにするっていう打ち合わせに入って、更に明確になってきました。最初は、あまり動けない芝居かなって思っていたんですけど、意外と動きが出ますね。この後、立ち稽古が始まったら、またいろんなものが見えてくると思います。

「舞台と声優の身体の使い方の違いを再確認している」

―― 『マーシー・シート』は、2人きりでセットもアパートの中で動かない芝居ですよね。普段のアニメーションの、例えば吹き替えの現場っていうのは、出演者が沢山いらっしゃると思います。そういった現場と、2人だけっていう緊張感の高まる舞台というのは、どういう風に違いますか?
三木: いや、舞台も声優の仕事も、役を借りる部分に関しては全く同じなんです。だけど、本当に見た目通りで、演技の際に自分の肉体を動かして使えるのか、使えないのかっていうこと……かな。ただ、声の仕事の時も当然肉体を使ってはいるんですけど。
―― 使い方が違う?
三木: そうですね。使うという意味が「似て非なるもの」になってくる部分がありますね。いやあ、どっちも楽じゃないです。
―― こないだ別の現場でご一緒させていただいて、その時に三木さんの演技される姿を見ていて、声優さんは声だけでなくて体を使って表現するというのはよく理解はできるんですけど、それと舞台は違うんだなと?
三木: いやもう、本当に違いますね。僕なりのやり方ですが、声優が使う肉体の使い方は、自分が声を任された人物の「動きを再現するための肉体」なんですよ。だから、マイク前で台本を持っている状況で、例えばフライパンで4人前のチャーハンを作っているシーンだったら、舞台だったら実際に作る動きをそのまま再現できるんですよ。だけど、マイク前ではそれができないから、その状態を再現する筋肉を動かせれば、止まった状態でよりリアルな声が発声できるわけです。それが声優と、映像とか舞台の人の肉体の使い方の差、だと思うんですね。
例えば、立った状態では、今のこんな感じのしゃべり。それが横になってしゃべるシーンになった場合に、映像とか舞台は実際に寝ちゃうから、寝た時の声になりますよね。でも声優は、立ったままで寝た時の声をやらなければならない。そこがうまくできないと、耳で聞いていても寝ている感じが出なかったりするわけです。だから、その立ったままの状態でリラックスして、この辺(首と胸の辺りを指す)をリラックスさせて、こういう感じでしゃべる(寝ている声になる)と寝ている感じになる。こういうコントロールの仕方っていうのが、声優の身体の使い方です。
例えばね、「え?もう朝かよ。今起きるから」(寝ている声で実演)って言ったら、寝てる状態から起きるというのを声だけで想起できますよね。そういう違いはやっぱりありますね。

「911を背景にした舞台だけど、311を経験した日本人だからわかる感覚もある」

―― お芝居の内容についてですが、台本を読ませていただくと、2人の役の関係性もあって、読んでるだけでドキドキする、かなりセクシャルな会話が行き交いますよね。実際に舞台をやられるにあたって、名取さんとのやり取りってどんな感じですか?
三木: いま僕は、違う意味でリアルなドキドキです。これ覚えるのかってドキドキですよ。
でも、稽古を重ねてもうすこし芝居が整理されてきて、僕のいらない部分の感情がそぎ落とされていったときに、自分でも新たに気が付くことがいっぱいあると思います。いま感じているのは、生っぽいんですよ、芝居自体が。だからその、生々しさじゃないですかね。僕らは、役としてだけど、いつもやってる、いつもしゃべってる内容だから、そのことについてはあんまりドキドキはしないですよね。基本的には見てくださるお客様たちが、隣の部屋でおきていることを覗き見るみたいな感じの舞台になると思うので、見てくださる人たちがドキドキしてくだされば、それはもう大正解じゃないかなっていう感じではありますね。
―― 演じる方としては、どちらかというと、日々のやり取りの中で冷静な駆け引き、やり取り、って感じになってくる?
三木: ただ、今回のお話の根底にあるのが911のことなので、そこのメンタルの部分……ですね。 外で起きていることの緊迫感というのが、常にバックグラウンドにあるはずなので。ただ、そればっかりになっちゃうと、ものすごく閉塞感の強いものになってしまって、見ている人たちがつらいかなとも思うので、そのあたりをこれからどういう風に組み立てていくかなというところです。ただ、名取さんや、演出の倉本さん、翻訳の常田さんとかとお話しさせていただく中で、日本人が311を経験しているので、そういった意味では、911とは別のものなんだけど、感覚的に置き換えることはできると思いますね。
あの金曜日、僕は仕事が終わって、タクシーで家に帰る途中に地震が来て、道路脇で女子大生たちがキャーキャー言いながらしゃがみ込んでいて、家に帰ってテレビをつけたら絶望的な映像が流れてきてっていう……
―― それが911の時はワールドセンタービルに飛行機が突っ込んでいって、あっという時にはもう…っていう。僕らはそれをニュース映像で見ていて……そういう感覚ですよね。
三木: しかも、地震があって5年という時期もあって、こういうテーマの作品をやるのも意味があるのではないかなと思っています。いろんなものが、風化してくじゃないですか。
―― 911のあの時には、多分日本におられてニュース映像とかを見られたと思うのですが、その時の記憶っていうのは、何か残っている事とかありますか?
三木: ちょうどあの頃、あるアニメ作品をやっていたんですよ。SF作品でしたが、ニューヨークかな、ビルが崩れるというシーンがあって、そのシーンの映像が使えなくなりました。その映像があまりに作品と酷似しすぎていて、現実がフィクションに追いつくのか、っていう感じでした。そういう経験は度々あるんですが、あのときは、ものすごいショッキングな映像で、なおかつそれが仕事に直結してきたので。ちょっと、とても信じられない…。いや、直面したくないから、なんか映画みたいだよねって逃げようとしていたのかなっていう気はしますね。

「見る方の心の中のどこかが動けば嬉しい」

―― 最後に、今回の作品は、大人の男女の二人芝居なんで、ちょっと若い人たちに向けて、どんな風にこのお芝居を楽しんでほしいのかっていうところを少しいただけますか。
三木: 舞台は、映画やアニメもそうですけど、見てくださった方の心の中のどこかが動けば嬉しいなって思いながら、やらせていただいていて、今回の舞台もそうなればいいなと思いながら取り組んでいます。すごく元気がでるとか、そういった類の話ではないんですが、逆に言うとリアルな、普段生活しているところと、何ら変わらない空気が、そこには流れている舞台だと思います。そこそこ年齢を重ねた男女の生き方というか生活みたいなものを感じていただけると嬉しいかなと思いますし、また、感じていただけるようにこれからまた、稽古に励んでいこうと思っておりますので、ぜひ、たまには自分たちが普段見ているジャンルとは違う、ちょっとシットリした舞台もご覧になってみてください。
―― このチラシの写真を拝見していて、三木さんが非常にセクシーですよね
名取さんの女性のセクシーさとは違って、男のセクシーさという部分が非常によく出ているので、この二人のいい意味での色気の対決だなという風に思っています。上演が楽しみです。
三木: ありがとうございます。

三木眞一郎   名取裕子

『マーシー・シート』
2016年3月13日~17日
シアタートラム
http://artistjapan.co.jp/pag_16/

三木眞一郎三木眞一郎
東京都出身。声優・ナレータとして、デビュー以来数々の作品に出演。主な出演作品『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』(ロイ・マスタング)、『薄桜鬼』シリーズ(土方歳三)、『ポケットモンスター』(コジロウ/ポケモン図鑑)、『曇天に笑う』(嘉神直人)他多数
主な出演舞台作品『乱童~Voice in City~』、音楽劇 『オリビアを聴きながら』、朗読劇『ラヴ・レターズ』、朗読劇『夏の夜の夢語り』

 

■ 公演概要 ■
★公演日程 平成28(2016)年4月13日(水) ~ 17日(日) 【全5回公演】
★出演 名取裕子、三木眞一郎
★会場 シアタートラム
★料金 6,800円(全席指定・税込み)
★チケット取扱い 【3/4(金) 10:00より 一般前売り開始 】
アーティストジャパン 03-6820-3500 http://www.artistjapan.co.jp/
チケットぴあ 0570-02-9999【Pコード 449-761】 http://t.pia.jp/
e+(イープラス) http://eplus.jp
世田谷パブリックシアターチケットセンター 03-5432-1515 (10:00~19:00)
PC http://setagaya-pt.jp/
携帯 http://setagaya-pt.jp/m/
★お問合せ アーティストジャパン 03-6820-3500
http://www.artistjapan.co.jp

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取材・文:菖蒲 剛智

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