【レポート】『じょしらく弐〜時かけそば〜』

じょしらく

『じょしらく弐〜時かけそば〜』

昨年好評だった舞台『じょしらく』の第2弾。この作品は『別冊少年マガジン』(講談社・2009~2013)に連載されたギャグ漫画作品、原作は久米田康治、漫画ヤス。ガールズ落語家漫画で、日常のどうでもよいことからネタを広げ、話を展開させる。落語をしている場面よりも寄席の楽屋での会話が主体となっている。一話完結スタイルで、外には出ない。各話のタイトルはそれぞれ古典落語に由来する。2010年に単行本第壱巻が通常版とキャラ落語CD付き特装版の形式で同時発売された。2012年1月にはテレビアニメ化が発表され、同年7月に放送された。メインキャラクターは全員が高座名で語られており、本名は不明。登場する落語家は5人。皆、個性的な高座名だ。

暗落亭 苦来(あんらくてい くくる)ダウナー系で躁鬱気質、浮き沈みの激しい性格、愛称はくくる。空琉美遊亭 丸京(くうるびゆうてい がんきょう)話の導入や繋ぎ、展開、オチ、さらには色気ネタをも担当することもあり、万能キャラ。蕪羅亭 魔梨威(ぶらてい まりい)やや見栄っ張りでノリやすい性格で進行役兼ツッコミ役。「つまんねー事聞くなよ!」の決め台詞は印象的。防波亭 手寅(ぼうはてい てとら)はノリの良い性格で”テトちゃん”と呼ばれている。高座名の由来は防波堤とテトラポット。主役なのだが、『別冊少年マガジン』の表紙には一度しか登場したことがないらしい。波浪浮亭 木胡桃(はろうてい きぐるみ)天真爛漫でロリキャラ、仲間たちからは”キグちゃん”と呼ばれている。

キャストは昨年同様に乃木坂46のメンバーが挑戦、しかもトリプルキャストとなる。しかもオリジナルストーリーという点も同じだが、今回はサブタイトルに”時かけそば”とあるが、『時そば』という有名な古典落語もある。『じょしらく』のドラマCDでは蕪羅亭 魔梨威(声:阿澄佳奈)が同名の落語を演じている。こちらのストーリーは落語の要領で勘定をごまかしたオタクの男がかけそばを食べた拍子に”時かけ”してしまい、25年後の世界へタイムスリップ、ここで自分の娘と出会い、彼女と協力して元の世界に戻る、という話である。

舞台仕様は昨年と同じで中央に盆があり、これが回って舞台転換する。ゲネプロではチーム『ら』[中田花奈(暗落亭 苦来) 生駒里奈(空琉美遊亭 丸京) 能條愛未(蕪羅亭 魔梨威) 松村沙友理(防波亭 手寅) 鈴木絢音(波浪浮亭 木胡桃)]。最初は高座のシーンから、防波亭 手寅が登場する。披露するは『時そば』である。それから他の3人が登場、空琉美遊亭 丸京が遅れて登場するが、背中にどこかの超大手劇団のトレードマークとも言える羽をしょって登場、しょっぱなから笑えるシーンだ。そしてお決まりの”どうでもいいネタ”が飛び出す。パーティの招待状、よくあるフレーズ、「普段着でおこしください」、「普段通りの格好ってことは、女子高生なら制服?」、「……ってことはコスプレパーティか?」、「普段着なら?」、「パジャマパーティか?」と連想ならぬ妄想の世界へいってしまう5人。こんな感じでゆる〜く、可愛く、時として突拍子もない、妄想てんこ盛りなギャグネタは前回同様に健在だ。もちろん、時事ネタ等も折り込んだ台詞もあり、ここは脚本家の腕の見せ所。前回と異なるのは、なんと防波亭 手寅が2066年に”時かけ”してしまうのである。

始まっておよそ23分後にOP『四方山話四六時中』を全員で歌うが、これがごきげんなナンバーなので、ここは楽しく聞きたい場面。劇中落語はよく知られている『まんじゅうこわい』をベースにした創作落語『まんじゅうこわすぎる』。ゲネプロでは蕪羅亭 魔梨威演じる能條愛未が披露、これがなかなか上手い(昨年の囲み会見では落語界から”引き抜き”オファーがあったことを披露)。

時をかけてしまうので、ストーリー展開はシュールな部分もあるが、これがアクセントになっており、そこに『じょしらく』ならではの”差し障りのないゆるい会話”がかけ合わさって前回公演と異なる印象。ラスト近く、シルエットで表現しているが、防波亭 手寅は未来で歳を重ねた自分に会う下りはちょっと感涙。

時間は無情にも過ぎてゆくものだが、その一瞬一瞬を懸命に生きる。「毎日は当たり前のように過ぎていく」「私の過ごした瞬間は一瞬たりとも間違っていない」という台詞がある。何気ない会話、日常、全て意味のあることである。この『じょしらく』に登場する5人は見た目は確かにゆるいかもしれないが、その中に一瞬の煌めきがある。それは演者の懸命さとリンクし、多重に見えるのは演劇ならではの”楽しい企み”だ。

もちろん乃木坂46ファンには嬉しいライブシーン、オリジナル曲『私たちの 全て』を熱唱、そして『じょしらく』ならではのお約束”暴力メガネ”こと空琉美遊亭 丸京が蕪羅亭 魔梨威をグーで殴るシーン、生駒里奈の殴りっぷりと能條愛未の派手に殴られ、吹っ飛ぶところは、息もあっていちいち可笑しい。暗落亭 苦来の不幸な空気感、防波亭 手寅のノリの良さ、波浪浮亭 木胡桃の可愛さ(猫かぶり感ありあり)と期待を裏切らないキャラクター構築、また、5人の息のあったやり取りはグループならではの結束力も感じる。ラストは『じょしらく』を熱唱、2時間弱の1幕もの、トリプルキャストなので、同じストーリーでも空気は変わる。全15公演なので、落語は15人全員が1回やることになる。全て観ることは不可能に近いが、複数回観劇に行くなら、ここは鑑賞ポイントとなるであろう。

ゲネプロ前に囲み会見があった。登壇したのは、全てのキャスト総勢15名。
初参加の生駒里奈はこの役に立候補したのは「髪の色が好きだった」というシンプルな理由から。井上小百合は昨年も出演したが「3チームとも違う個性の演技が観れると思いますので、毎回、驚いてくれたら嬉しいです」とPR。また、山崎怜奈は「大学の講義のあとに稽古という日もあり、テンションの切り替えが大変で……普段の自分よりテンションが50倍も高い役なので……」とコメント。松村沙友理は「この役は主人公なので選びましたが、あんまり皆に信じてもらえないので、今回は主人公感を出せるように演じたい」と語ったが、しっかり有言実行していて”頑張り”が見えた。

また、昨年と同じ質問「一番真打ちに相応しいのは?」に関しては、またもや能條愛未、記者のリクエストに応えて冒頭をやってみせた。また、松村沙友理は「私達はグループアイドルなのであまり1人でしゃべる機会がありません。一方、『じょしらく』では一人一人が落語を頑張っています。注目していただける良い機会だと思います」と語ったが、落語にふれることがない観客には落語の面白さに気づけるはずだ。

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[出演]
乃木坂46

<チームら>
中田花奈 生駒里奈 能條愛未 松村沙友理 鈴木絢音
<チームく>
斎藤ちはる 佐々木琴子 井上小百合 桜井玲香 渡辺みり愛
<チームご>
新内眞衣 樋口日奈 山崎怜奈 若月佑美 北野日奈子

【配役】
◆暗落亭 苦来 (あんらくてい くくる)
中田花奈 斎藤ちはる 新内眞衣
◆空琉美遊亭 丸京 (くうるびゆうてい がんきょう)
生駒里奈 佐々木琴子 樋口日奈
◆蕪羅亭 魔梨威 (ぶらてい まりい)
能條愛未 井上小百合 山崎怜奈
◆防波亭 手寅 (ぼうはてい てとら)
松村沙友理 桜井玲香 若月佑美
◆波浪浮亭 木胡桃 (はろうきてい きぐるみ)
鈴木絢音 渡辺みり愛 北野日奈子

[公演データ]
『じょしらく弐~時かけそば~』
原作:久米田康治
漫画:ヤス
作・演出:川尻恵太 (SUGARBOY)
2016年5月12日~5月22日
AiiA 2.5 Theater Tokyo

http://www.nelke.co.jp/stage/jyoshiraku2/

(C)久米田康治・ヤス/講談社
取材・文/高浩美
撮影/洲脇理恵(MAXPHOTO)

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