【インタビュー】ミュージカル『刀剣乱舞』  演出 茅野イサムさん

刀剣乱舞

ミュージカル『刀剣乱舞』 ~阿津賀志山異聞~
演出 茅野イサムさんインタビュー

『刀剣乱舞』の勢いが止まらない。昨年秋にトライアル公演を行ったミュージカル『刀剣乱舞』、春にはアニメ化も発表され、5月に入ってからはストレートプレイ版の「舞台『刀剣乱舞』虚伝 燃ゆる本能寺」、幕が開いてからは、こちらも連日大入り状態であった。そしてミュージカル版の本公演も開幕までいよいよカウントダウン、そして早くも今秋に上演の新作公演も発表され、ますますの盛り上がりを見せている。このミュージカル『刀剣乱舞』の演出でもあり、『サクラ大戦』や『聖闘士星矢』等のビッグタイトルの舞台化を手掛けた茅野イサムさんに昨年公演の反響や、本公演の見どころ、また茅野さんならでは視点で原作ものの舞台化の可能性等について語ってもらった。

お芝居ってマイナーな世界ですからね。なかなか世間がざわざわしてくれない。

Q 昨年のトライアル公演の手応え、反響、また大変だったことは?

茅野:ゲームをやられている方ならご存知だと思いますが、「刀剣乱舞-ONLINE-」にはストーリーらしいストーリーというものがないんです。ですから、台本を作ることがとても難しかったです。なにしろ、舞台のための完全なるオリジナルストーリーを紡ぎ出さなければならなかったのですから。まずは『刀剣乱舞』という作品を知るために、ゲームをやり込みました。ゲームをやっているだけでは分からない部分は、とことん原作のニトロプラスさんから教えてもらいました。僕は今までたくさんの原作モノを手掛けてきましたが、こんなに原作サイドとディスカッションを重ねながら作ったのは初めてです。作品の裏に流れている作り手の想いとか世界観を知ることができて、舞台作りの大きな手助けになりました。
今回のお芝居は、ただ普通のミュージカルを作るだけではダメなんじゃないかと思っていました。だって、原作の「刀剣乱舞-ONLINE-」はゲームの枠を飛び越えて、社会現象にまでなった作品じゃないですか。僕たちもなんとか芝居の枠を超えたいと、この企画をいただいたときからプロデューサーと話しあっていたんです。そういった理由で、二部構成にしてライブをやろうと思いついたんです。今までのお芝居にない形態を作りたかったんです。基本的にミュージカルは1人の作曲家が、そのお芝居のストーリー、台本に合わせて曲を作ります。実は、一昨年ミュージカル『AKB49~恋愛禁止条例~』をやった時に、AKBの曲だけを使ってミュージカルを作ろうと思いまして、作るにあたって「AKBの曲を聴かせてください」と。そうしたら600曲以上!(笑)、「すげー、こんなにあるんだ!」と、聴いたら、売れてるだけあって凄く耳に残ったり、口ずさめたり、僕の中に飛び込んできて、本当にいい曲がいっぱいある。作詞は秋元さんですが、いろんな方が作曲されていらして、どの曲もとても個性的なんです。そして、聴いているとあるんですよ。”この場面で、この曲を使いたい!”と思える素敵な曲が。だから、芝居のために曲を作らなくても、既存のAKBの曲だけでミュージカルが作れてしまったんです。そんなわけで、ちょうど「こんな、作り方って面白いな」と思ってたところだったんです。今回、ミュージカル『刀剣乱舞』を作るにあたって、そういった経験を踏まえて、プロデューサーの松田さんと話をしてる中で、ミュージカルの作曲家を立てるのをやめてみましょうか、と。今、売れていらっしゃるアーティストさんは、常に、競争に立たされている、売れなければ使ってもらえないから、お客さんの心に届く、キャッチーな曲を創っていらっしゃいます。そういったアーティストさんから上がってきた曲は、刺激的だったり、何より口ずさめる!この試みはもの凄く、上手くいきましたし、何よりも楽しかったですね。2部の曲、最初からCDカットしたかったし、1部の曲も本当に覚えられる曲になりました。お芝居から離れて、家で聴いたり、車の中で聴いたり、自分でヘッドホーンで聴いたり、常に曲を親しんで頂ける曲を、そういう風に聴いてもらいたいと、それが今回、上手くいったことが凄く嬉しかったですね。2部に関しては、本当にお客さんが、「キャーキャー」言って、ペンライト振って喜んで頂けるようなもの、そういうものにしたいなと。その時にちょっと不安だったのが、あの世界観と、ライブが、かけ離れていること。1部の、あの衣装のままじゃなくって、やはりライブのステージ衣装を作らなくっちゃならんと。僕は絶対にありだと思ったんですけど、それに対するアレルギー反応はないかな?とか、ここはちょっと心配でした。現実に、二部構成でライブやりますって発表した時に、「ふざけるな」とか「何?信じらんない!」「えっ!?ペンライトOK?団扇OK?何、考えてんの?」「何、やりたいの?」と世間の反応が凄まじかった(笑)、相当、皆さん、ご心配されたみたいで、「なんてこと、してくれるんだ」「これはヤバいんじゃないか」「ちょっととんでもないところに進んでってる?ミュージカル『刀剣乱舞』は」というような(笑)期待してた以上に、ネットでもいろいろ騒いで……お芝居ってとてもマイナーな世界ですからね、なかなか世間がざわざわしてくれない。でもこの作品に関しては、凄くざわざわして、エンターテイメントを創っている人間としては、なんか、楽しいし、”やったぜ!”っていうのがありますね。

Q いい意味でのざわざわ、ですね。

茅野:そうです!ミュージカル作るって言ったときからざわざわしだして、無視されるよりは全然いいことなんですね。ざわざわするってことは、皆さんがこの作品が凄く好きで、愛着があって、変なことしてくれるなって当然思っていらっしゃる証拠です。特に2.5次元舞台をやる上で絶対にそうだと思うんですけど、原作を愛して下さっている方達を不快な思いにさせるのは一番ダメだと。”お芝居にしてくれてありがとう”というものを作らなくっちゃ!

いくつか新曲を”補充”して、サプライズを!ちょっと違うステージに、デラックスになります!

Q ブロードウェイではよくありますことですが、トライアル公演をやって、何ヶ月か経っていわゆる本公演、日本で、これはないことですね。トライアルで得た反応を見ながら、本公演を作るのは、ステップとしてはいいシステムだと思います。今回、いよいよ本公演、ネタバレにならない程度に、演出、見どころを。

茅野:今回に限らず、僕がミュージカル作る時って、まず、ストレートプレイを作りたいんですよ。ちゃんと台詞がしっかりしている舞台、お芝居の構造がしっかりしているもの。歌とかダンスでなんとなくごまかしたくないな、という思いがありますね。

Q ふわっと入るんじゃなくて、ですね。

茅野:そうです。歌やダンスありきじゃなく、きっちりとした台詞劇の台本を作るんです。そこからどうやってミュージカルにするか、っていうことをやってくんですね。今回も、御笠ノ忠次さんとコンビを組んでますが、彼はまだ若いけど、とても力のあるいい台詞を書く実力者です。彼とニトロプラスさんとみんなで何度も叩き合いながら、内容を詰めていったので、台本に関しては、そんなに大きく変えなくても大丈夫かな、と思います。でも、もっとミュージカルにアレンジするべきだな、というシーンがいくつかありました……要するにストレートプレイの手法でやってたところを、しっかりミュージカルにしようと、そこで新しい曲を増やしましたね。あとは、2部も新曲を増やして……前回の2部も、凄くよかったんですけど、サプライズを、ね!いくつか新曲を”補充”して、ちょっと違うステージにしようかな、と。セットもね、ずいぶん変えてるんですよ……豪華にね(笑)。

Q デラックスバージョン。

茅野:そう、デラックスです。

Q どうデラックスなのかは、観てのお楽しみですね。

茅野:そこはお楽しみに!

Q 新曲も舞台セットも、サプライズですね。

茅野:是非!観てください!

2.5次元舞台は必然的に新しい表現方法と出会わせてくれる場だと思います。

Q ゲーム、アニメ、マンガ原作の舞台の可能性について、難しい質問で恐縮です。

茅野:いろんな原作ものがありますが、今回の『刀剣乱舞』もそうですが、恐らく、普通のお芝居作ろうと思ったら、思いつかないですよ。名だたる名刀が人間になるという、物語が刀に宿っている訳ですよね。凄い設定ですよね!例えば、三日月宗近だったら、本当に1000年の歴史を背負っていますし、その本物の刀が、現代に残っている……こうやって脈々と受け継がれている。刀が肉体を得て、歴史を変えようとしている敵と戦う、普通に芝居にしようとしたら、たぶん企画書を書いても「はぁ~?」って言われます(笑)、絶対に企画が通らないですよ。僕も劇団で、芝居をずっとやってきてますが、やはり、どうしてもどこかで常識にはまっちゃう、”普通に”舞台で出来ることを考えちゃうんですね。固まってるとまでは言わないけど、どうしても作るものに対して限界があるんじゃないかっていうってことを思いますね。ゲームやアニメ、特にアニメなんかでやってること、なんでもありじゃん!と。正直、「こんな発想、しないよな、芝居で」って。だから舞台化に取り組むと大変なんですよ。人は空を飛べないし、火吹かないし、瞬間移動も出来ない。舞台『東京喰種トーキョーグール』やった時は、赫子(かぐね)というものが身体から出てくるんだけど、そんなもの、どうやって舞台で表現するんだって言った時に、実は舞台ならではの表現方法がある、映像(映画化)だと、全てリアルに描いてしまうんでしょうけど、舞台っていうのはこちら側の想像力と、お客様の想像力、それを頼りに作っていくものです。そこに舞台ならではの作り方があるんです。「これ、どうやるの??」って、いつも頭抱えますが、難しいところに挑戦して「いや~これこそ、”舞台”だよね!」っていうような表現が出来た時には、本当に嬉しいですね。「してやったり!」って思うし、それが、見つかって表現出来た時は、こんなに楽しいことはないです!表現を広げてくれる……新しいものが作れる可能性をもたらしてくれるんです。最近はプロジェクションマッピングの表現方法が面白いですね。でも、ただ映像を流すのではなくて、映像とセットと人間が一緒になって動く。今も新しい表現方法を模索中です。2.5次元舞台は必然的に新しい表現方法と出会わせてくれる場だと思います。衣裳やヘアメイクも相当進化していますね。例えば昔のウィッグは「うわー、かつらだあ」って思ったんだけど(笑)、今は物凄く進歩してて、よく出来てますよね。次の、秋の新作は幕末もの、本当に、早く見せたいです、凄いですよ!皆が工夫する、そういう困難なことにチャレンジしていくことで何か、新しいものが生まれてくる。僕にとっては、2.5次元舞台って凄く楽しい、ある意味、遊び甲斐がある遊び道具でもあるな、遊ばないと、面白くない。今はとっても楽しいですね(笑)。

Q 最後に、お決まりの質問で、締めでPRを。

茅野:やらなきゃいけないことが凄く多くて、とにかく舞台上でやれることは全て、やっています。台詞もかなりの分量で、歌って踊る、ミュージカルだから当たり前、大変な衣装を着ながら、あの大階段の上で立ち回りをする、もういくら時間があっても足りない中で、作ってきました。本当に、幸せなことに、もう一度、ブラシュアップする機会を頂けて、前回作った土台に立って、そこからもう一回、作っていきますから、ただ、前回のトライアル公演をなぞるのではなくて、クラッシュ&ビルド、一度作ったものをぶち壊して、新しいものを作ろうということですから、今、本当にぶち壊している作業をしていますが、より、エキサイティングなお芝居になっていると思います!是非、楽しみにして頂きたいです。ミュージカル『刀剣乱舞』、第1シリーズですけれども、お客さんに喜んで頂いて、また、”次の舞台を”って思って頂けるような、作品にしたいと思います!

刀剣乱舞 刀剣乱舞

茅野イサム(かやの・いさむ)
1986年、劇団善人会議(現・扉座)入団。
劇団の中心的な俳優として活躍し、2002年以降は演出家としてストレートプレイからミュージカルまで数々の作品を手掛けている。
主な作品に『サクラ大戦』シリーズ(2003~08年)、安倍なつみ主演ミュージカル『おかえり』、ミュージカル『エア・ギア』、D-BOYS STAGE『完売御礼』『鴉』『ラストゲーム』『淋しいマグネット』、『パッチギ!』、劇団EXILE華組×風組『ろくでなしBLUES』、スーパーミュージカル『聖闘士星矢』、『マクロス ザ・ミュージカルチャー』、ニコニコミュージカル『千本桜』、ミュージカル『AKB49~恋愛禁止条例~』、ロック☆オペラ『サイケデリック・ペイン』、舞台「マジすか学園」~京都・血風修学旅行~、舞台『東京喰種』など。

[公演データー]
ミュージカル『刀剣乱舞』 ~阿津賀志山異聞~
[東京]2016年5月27日~6月12日 AiiA 2.5 Theater Tokyo
[大阪]2016年6月17日~6月19日 森ノ宮ピロティホール
[京都]2016年6月23日~6月26日 京都劇場
ミュージカル『刀剣乱舞』 新作公演

[東京] 2016年9月24日(土)~10月10日(月・祝) AiiA 2.5 Theater Tokyo
[福岡]2016年10月15日(土)~16日(日) キャナルシティ劇場
[大阪]2016年10月21日(金)~30日(日) サンケイホールブリーゼ
[東京凱旋]2016年11月17日(木)~27日(日) AiiA 2.5 Theater Tokyo

https://musical-toukenranbu.jp
©ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会

取材・文/高浩美

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