【3.0レポート】本格文學朗読演劇 シリーズ第 10 弾 極上文學『春琴抄』

春琴抄

本格文學朗読演劇 シリーズ第 10 弾 極上文學『春琴抄』

この作品は、日本文学の上質な世界観を朗読を行う“読み師”とパフォーマーである“具現師”からなる構成で立体的に表現し、良質なビジュアルと音楽、動いて魅せるスタイルでワンランク上の表現へのこだわりが人気のシリーズ、特徴は、女性役も含めて全ての役を男性が演じるところにある。今回の『春琴抄』、登場するヒロインは目が見えないという設定、朗読とは相容れない要素をはらんでいるが、それを視覚的にどう見せるかがポイントとなる。

芝居が始まる前から客席にはパフォーマーである5人の具現師が鳥の笛を吹きながら、時には折り紙を観客に渡しながら歩いている。”始まる前から始まっている”という趣向、時にはちょっとお客さんに軽く絡んで笑い声も起きる程、楽しげだ。それからお決まりの場内アナウンス、これは佐助が”担当”、それに合わせて具現師がちょっとコミカルな動きをするので、また客席から笑い声が起こる。そして具現師は舞台に上がり、『春琴抄』の物語の始まりである。

春琴抄 春琴抄

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台本は原作のエッセンスを残しながら、観客にわかりやすく、聞きやすくなっている。この物語の特徴は登場人物視点ではなく、”私”という第3者が語る、という点にある。常に客観的な見方で春琴と佐助を語り、具現師はあらゆる役割を担う。目の見えない春琴、しかし春琴は三味線の名手、一呼吸おいて台詞を言う、この間合いに一瞬であるが、春琴の繊細さを感じることが出来る。佐助に暴力をふるい、ひたすら耐える佐助、その姿が見えない春琴はさらに執拗に佐助を叩く、春琴の苛立ち、繊細だからこそなのではないか、と思われる。舞台上で台本に触る姿と暴力をふるう姿が観客の脳内でリンクする。春琴に寄り添いながら台本を差し出す佐助、深いところで理解を示しているのだ、ということがビジュアル的にわかる。うぐいすも俳優が演じているが、このうぐいすもにも台詞があり、その内容は”第3者”の視点、しかもクールで客観的、だからこそ、春琴に可愛がられていたうぐいすなのだ、ということが想像出来る。

原作もそうだが、春琴と佐助の関係は純粋、舞台では台詞の言い回しや所作で表現、また、春琴を男優が演じることによって醸し出される艶やかさと妖艶さ、谷崎文学を視覚的にわかりやすく見せる。ひたすら春琴に仕え、恋い焦がれる佐助、文学作品は”文字情報”なので、ビジュアルに”これが正解”というものはない。映画化もされているが、今回の舞台も含めて、そのどれもが”谷崎潤一郎の『春琴抄』”なのだと認識出来る。原作が放つ色彩とメッセージ、こういった文学作品は何百年たっても、きっと何らかの形で受け継がれていくのだと確信出来る。

ラスト、厳かな印象で佐助の決意と想いが一種の耽美的な色香を放つ。
音楽は奏で師が芝居に合わせて旋律を奏でる。危うさや艶やかさ、空気感をメロディにのせて観客のイマジネーションを後押しする。サブタイトルは”秀麗な日常 妖艶な音色 二人は盲目”とある。本当の愛は盲目、見えなくても見えるものがあり、見えていても見えないものもある。ラスト、春琴と佐助は空を見上げる。その姿は美しく、清々しさと艶やかさと、その先にある一条の光、きっとこの二人には見えているに相違ない、と思わせてくれた。

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