安西慎太郎

【インタビュー】『幽霊』安西慎太郎

『幽霊』安西慎太郎(あんざい・しんたろう)

 ヘンリック・イプセン、「近代演劇の創始者」または「近代演劇の父」と称されるノルウェーの劇作家だ。またシェイクスピア以降の劇作家では世界で最も上演されている劇作家の一人である。イプセンの時代において、演劇は悪に立ち向かう主人公、善が幸福をもたらし、不道徳は苦痛をもたらす、といったものが主流であった。イプセンは真っ向からこの考えに挑み、生活状況や道徳の価値観について批評的な見方や疑問を提示、観客が持っていた“固定観念”を破壊した。イプセンは1879年に『人形の家』を、1881年に『幽霊』を発表したが、この作品をきっかけにイプセンは世界から注目されるようになった。それから『野鴨』(1884)、『ロスメロスホルム』(1886)、『海の夫人』を発表する。

 さて、この『幽霊』という作品、当時タブーとされていた問題、「梅毒」「近親相姦」「聖書批判」等が提示されていたので、多くの非難を浴び、多くの都市で上演が禁止された。初演は1882年のシカゴであったが、ノルウェーでは1883年にノルウェーの劇団で初演。

 物語の舞台はノルウェー西部。アルヴィング夫人の屋敷では、翌日に控える孤児院の開院式の準備のため、マンデルス牧師が立ち寄っていた。愛する一人息子のオスヴァルもパリ生活から数年振りに帰省し、上機嫌なアルヴィング夫人。
しかしそんな中で、夫人がおそれていたことが次々と明るみになる。屋敷を出入りする指物師のエングストランや、夫人の小間使いのレギーネの屋敷との関係が徐々に明るみになっていく。ギリシャ悲劇に比されるべきイプセンの傑作を、演出するのは鵜山仁さん、主人公のアルヴィング夫人に朝海ひかるさん、息子・オスヴァルに安西慎太郎さん、レギーネに横田美紀さん、エングストランに吉原光夫さん、牧師のマンデルスに声優としても活躍中の小山力也さん、実力派が集結した。
 この物語、衝撃的な結末を迎えるが、今回、オスヴァルという難役に挑む安西慎太郎さんから特別コメントが寄せられた。

ーー「近代演劇の創始者」と言われているイプセンですが、この『幽霊』に出演が決まった時の感想をお聞かせください。

安西:素直に嬉しかったです。それと同時に不安もありました。当時のタブーが沢山つまっている『幽霊』は掘り下げていけばいくほど広く深くなっていく内容だと思いました。今はとてもワクワクしています。

ーー主人公のひとり息子・オスヴァル・アルヴィング、難しい役ですが、お稽古中とは思います。役作りの上で難しさややりがい等、教えてください。

安西:当時の気候は凄く意味があると感じてます。そして病気。病気がどれだけ心身共に彼を蝕んだか、はかりしれません。愛しすぎてるが故の母に見せる感情の幅。『自分は存在するのが辛い。』というより逆に、だからこそ『生きる喜び』を知ったのではないかなと思います。勿論、信じられないような辛さもあったとは思いますが、その苦しみを知ったから『生きる喜び』を知ったと僕は思います。そんな彼の内実を繊細に深く掘り下げて演じていきたいです。

ーー演出家は鵜山仁さん、共演者も実力派揃いですが、何かエピソード等ございましたら、お願いいたします。

安西:本読みがとにかく濃密です。鵜山さんをはじめとしてキャストの方々も凄いです。毎日新しい発見と共に課題が見えてきます。素晴らしい方々に囲まれ『幽霊』をできることを幸せに思います。

ーーところで、話が変わりますが、俳優さんになったきっかけは?
安西:高3のとき、『ギルバート・グレイプ』のディカプリオの演技を観て衝撃を受けました。次は自分がこういう衝撃を与えたい。それがきっかけです。

ーー最後に作品PRを。

安西:1つのお屋敷で起こる家庭劇です。普段絶対起こり得ない真実が迫ったとき人は何を考えてどのような行動をとるのか。そこが凄い面白いです。また、暗いだけではないドタバタした喜劇性も楽しんで頂けるかと思います。
是非劇場へお越し下さい!

ーーありがとうございました!

安西慎太郎(あんざい・しんたろう)

幸福な職場

安西慎太郎

2012年、『コーパス・クリスティ 聖骸』(演出:青井 陽治)にて俳優デビュー。
その後、2013年には、第21回読売演劇大賞・最優秀賞を受賞したクリストファー・マーロウ原作『エドワード二世』(演出:森 新太郎)へ出演。また同年には、ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズン(四天宝寺 白石 蔵ノ介役)で人気を博す。
以降の主な出演舞台作品は、『聖☆明治座・るの祭典 』(演出:板垣恭一)、『戦国無双~関ヶ原の章~』主演(脚本・演出:吉谷 光太郎)、『もののふ白き虎』主演(脚本・演出:西田大輔)、 『僕のリヴァ・る』主演 (脚本・演出:鈴木勝秀 )、『アルカディア』(演出:栗山 民也)、『Sin of Sleeping Snow』(作・演出:西田大輔)、『K -Lost Small World-』主演(脚本・演出:末満健一)、『喜びの歌』(演出:鈴木 勝秀)など多数。
今後、主演舞台『幸福な職場』(作・演出:きたむらけんじ)2017年1月26日(木)~29日(日)東京:世田谷パブリックシアター公演が控えている。

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【出演】
朝海ひかる 安西慎太郎 吉原光夫 横田美紀/小山力也

【公演データ】
『幽霊』
紀伊國屋ホール
2016年9月29日〜10月10日
兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
2016年10月13日・14日

作:ヘンリック・イプセン
訳:原千代海(岩波文庫)
演出:鵜山仁
https://www.stagegate.jp/

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