曇天に笑う

【インタビュー】舞台『曇天に笑う』玉城裕規さん、百瀬 朔さんインタビュー

舞台『曇天に笑う』玉城裕規さん(曇 天火[曇天三兄弟の長男])、

百瀬 朔さん (曇 宙太郎[三男])インタビュー

人気作品『曇天に笑う』は唐々煙原作、「月刊コミックアヴァルス」(マッグガーデン)2011年3月号~2013年6月号で連載され、2014年のアニメ放映も好評のうちに終了し、しかも舞台化はその翌年の2015年2月上演という早さ、15回公演のチケットが即日完売、1万人を上回る動員を記録する大ヒット公演となった。原作はアニメ放映以降も、シリーズ作品の連載や原画展の開催など、ファンを増やしながら大きく展開している。今回はファンからの熱いアンコールの声と、原作の盛り上がりを受けての再演となる。もちろん、初演の舞台版、アニメ版の構成・脚本を手掛けた高橋悠也(QueenB)が引き続き脚本を手掛け、演出も菜月チョビが続投する。
1878年、明治維新以降のこと。日本国内は士族反乱などで犯罪者が増加した。彼らは監獄に送り込まれるも脱獄は後を絶たなかった。そこで政府は脱獄出来ない「獄門処」を設置、重罪者をここに放り込んだのである。その護送の最終段階となる”橋渡し”を担当するのが湖畔の大津にある「曇神社」の曇三兄弟であった。この時、町を覆う空は300年に一度の長期の曇天になっていた。この時に現れて人々に災いをもたらすという「大蛇(オロチ)の器」を求めて右大臣直属の部隊・犲(やまいぬ)が始動することとなった……というのがだいたいの設定である。

曇天に笑う

「みんな必死に一緒に創ったっていう印象が一番大きかったです」(玉城)
「いい意見もたくさん頂いていましたので、そこから自信が持てました」(百瀬)

Q初演の感想をお聞かせください。

百瀬:僕自身、初演時は2.5次元舞台出演は初めてで……怖い、じゃないですけど、始まるまでは自分の役、宙太郎の役は受け入れられるのか?自分自身も好きな役だったので、そういうドキドキがありました。

Q 実際に幕が開いてからは?

百瀬:いい意見もたくさん頂いていましたので、そこから自信が持てました。自分がこの役を一番愛している、体現化してるのは僕しかいないので、そこはブレないで、しっかりやっていこうと。
玉城:初演は怒濤だったってなって思います……当初、チョビさんがどういう演出するかわからない、脚本もどこを抜粋するのか、どうまとめるのかもわからない状態から始まったので、キャストさん、スタッフさんも、原作の世界をどう舞台化しようかということを試行錯誤しながらやっていったので、いろいろ悩んで考えて、っていう時間が凄く多かったですね。みんな必死に一緒に創ったっていう印象が一番大きかったです。

Q お客さんの反応は?

玉城:感じてなかった、っていうくらいヘトヘトだった……とにかく生きていることが精一杯な世界観で、チョビさんもそれを欲していましたので……あの時代に生きる人だから凄くパワー使わないといけない、人の生き死に、斬る、斬られるっていう時点で、今の人たちより力強さが必要だいうことをチョビさんは意識されていて、そこを重要視すると、おのずといろんな部分が削られて、必死にその世界で生きているっていうことを出したかったですね。演出家さんによって、だいぶ変わる作品だと思うんです。チョビさんがやるなら、チョビさんの『曇天に笑う』が生まれる訳で、それについていく、チョビさんはパワフルな方なので、並大抵のことではついていけない、うん、”しっかりみんな、ついていこう!”っていうのがありました。……結構、アニメ放送と舞台版、時期が近かったですね!アニメを観ている人には舞台版に先行して声優さんの声やアニメの印象があるから。

Q 声優さんが構築してくれたキャラクター、アニメですからもちろん動いていますし、視聴者、ファンはアニメのイメージががっちりついている、それを受けての舞台化だと、そこから離れすぎるとお客様が「え~」って思っちゃうことがある、と。

玉城:そうですね~。無視出来ない……。

Q かといってコピーもダメだし。演じる俳優さんはさじ加減が難しいのでは?と思いますね。

玉城:そうですね、初演の時はそれを考えていたんですけど、チョビさんは原作を意識せず、生身の人間がやるんだから、舞台ならではの宙太郎であったり、天火であったりはゼロから作ろうと、脚本も限られた尺で、壮大なものをまとめているので、アニメ・マンガの人物像に重ねたままだと繋がらなくなるんですね。短い時間の中で、だからこそ、舞台ならではの生き様があったりする。チョビさんはそう思って創っていらっしゃったんですね。

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「 新しいものを作ろうという気持ちでやっていけたらな、と思います」(玉城)
「自分の中では大きな作品だったので、単純にもう一回やらせて頂けることは嬉しいです」(百瀬)

Q 独特の話、世界観ですが、再演が決まった時の感想を。

2人:来たか!(笑)

百瀬:2回目、来たか!僕は再演ということ自体が初めてなんですよ。二回目の怖さがあるな、と。一回目も凄い怖かったんですけど、一回目は考えている暇もないくらい必死にやっていました。二回目はそれだけではダメで、余裕がある訳ではないですが。初演を経験した分、いいものを見せなきゃいけないっていうプレッシャーは(再演を)聞いた時に感じましたね。すごく好きな作品、自分の中では大きな作品だったので、単純にもう一回やらせて頂けることは嬉しいですし、出身が大阪なんで地元に行けるのが単純に嬉しいですね。

Q よく皆さん、言われるのが、1回目があるから2回目はもうひと超え、がプレッシャーっていうお話はよく聞きますね。

玉城:来たか!(笑)。命削るかと、寿命縮まるんじゃないかって思うくらい……でもキャストが変わりますから、再演という形ではありますが、チョビさんも言ってますが、(再演は)自然に変わってくるだろうと。初演で感じたものだったり想いだったり、初演にいらして再演を迎えなかったメンバーの想いっていうのは僕らがしっかりと受け取って、新しいものを作ろうという気持ちでやっていけたらな、と思います。

Q キャストさんが変わると変わりますね。

玉城:もう全然、違いますよ。曇家の2人(曇空丸、金城白子)が、初演と違うキャストさんですから。常に一緒にいるうちの2人が違う。変わりますね。キーパーソンだし、この2人めちゃめちゃかき乱すし。

百瀬:前もぐちゃぐちゃにされましたね。

玉城:その2人が変わるって言ったら芝居はもちろん変わりますよ。楽しみではありますね。

Q 新しく入って来られる方は既に出来上がっているところに入るのはプレッシャーかも、ですね。

玉城:感じてはいると思うんですけど、感じないで欲しい。いい意味で感じてくれたらいいんですけど。チョビさんが世界観をリードして……皆で一緒に作品作りが出来れば、と思います。この2人、松田凌と植田圭輔は芯がしっかりしているので……心配はしていないです。

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「登場人物各々がしっかりしていて、皆、愛、信念があります」(玉城)
「(原作が)緻密に作られている分、その世界観を僕らのお芝居で表現する感じ」(百瀬)

Q この『曇天に笑う』の世界観、特徴、どう思いますか。

百瀬:マンガを読んだ時、絵がすごく綺麗っていう印象があり、背景とかがすごく緻密に描かれていると感じました。舞台版は、セットとかガッチリしているっていうよりも、移動しやすいようなセットで、そこで僕らが表現する……そもそも(原作が)緻密に作られている分、その世界観を僕らのお芝居で表現する感じだったので、そこの面白さはあります。

玉城:舞台版は数時間で泣いて笑って頂かなければならないので、割愛してまとめている部分はありますが、登場人物各々がしっかりしていて、皆、愛、信念があります。各々、愛が詰まっているから……愛ですね!兄弟愛だったり、曇家以外のところでも、形は違えど金城白子と風魔小太郎の兄弟愛が生まれたりするので、うん、いろんな愛の形を見て欲しい、その形はそれぞれ違いますし、描かれていない部分でも見せたいところがある、安倍蒼世と空丸の師弟関係もありますし、役者同士でも(関係性を)考えたりして、ストーリーが骨太な分、舞台でやっていくのは、より各々が原作を理解していかないと成り立たない作品だと思いますね。壮大で、しっかりしてる話、凄いな〜と思いました。

Q 原作、作画が緻密なものは舞台にのせるのが大変ですね。

玉城:そうですね~。スタッフさんとか凄く大変だと思いますね。しかも3時間弱にまとめないといけない。

Q せっかくお二人いらっしゃるので、それぞれの印象は?

玉城:朔ちゃんはこの歳ですごいしっかりしてるなと思いました。前回、今回もそうですが、精一杯やってて……。

百瀬:僕は(玉城さんは)天火、そのままだと思います。完璧な人っていうところで役そのままの感じがして、しんどいところ、疲れるところ、大変なところを基本的に見せない方なので。そこは凄い方だなと。

「学生の時に映画『GO』(注)という作品を観て「役者になりたい」って」(玉城)
「この仕事をする一番いいところ、魅力はやっぱり、人の心を動かせるところ」(百瀬)

Q 俳優になったきっかけ、目指す俳優像。

玉城:きっかけは映画を観て、僕は。学生の時に映画『GO』(注)という作品を観て「役者になりたい」って純粋に思って、その映画の世界の中で、生きてみたいって、思ったのがきっかけですね。うん、自分以外の人になれる、凄く楽しそうだなと。と、純粋に思いました、それがきっかけです。目指す俳優像は、常に笑っている役者さんでありたいな、とは思います。物事をいろんな物事に対して明るく取り組みたいな、と思います。人に対してもそうですし。

百瀬:最初は小さい頃に親と劇団四季に観にいって、その後、家に帰ったら、階段の上でシンバのマネをしていたらしく、母親が「これだ!」って。僕自身はあんまり憶えていないんですけど、10歳くらいだったかな?そこから今に至るんです(笑)。きっかけはそれなんですけど、この仕事をする一番いいところ、魅力はやっぱり、人の心を動かせるところ、だなって。自分は映画を観てて心動かされたりしますし、明日、頑張ろうって思います。色々、お仕事も少しづつさせて頂いていて、いろいろ思ってた部分がありましたが、最近、そこに戻ってきて、この仕事の意義みたいなところ、やっぱり、感動するところ……例えば、凄い悪役とかいやな奴を演じて、それで凄いあいつのこと、嫌いになった、って言ってもらえるのもいいと思います、そうなればいいなと思っています。

Q シンバっていうと『ライオンキング』ですね。階段でシンバ、それはプライドロックのところ。

百瀬:たぶん、そうです。全然憶えてないんです(笑)。でも、最近、劇団四季を一番最初に観たときにナラ役をやっていた濱田めぐみさんとお会いして、それを母親に言ったら凄く喜んで、家からパンフレット送ってきました。そうやって繋がったのが嬉しかったですね。十何年も経って、その時出演していた方とお話することが出来て、これもやっぱりこの仕事の面白いところかな。

Q このお仕事していなかったら絶対に会えませんね~。

百瀬:そうですよね、会えなかったと思います。

Q 最後にお客様へのメッセージを。

百瀬:再演ということで、前回を超えていこうという気持ちが強いし、超えて当たり前と思うし、もっと前回とは違った楽しみ方もあると思います。そういうところを観て頂ければ。自分自身にも、2回目ということでプレッシャーをかけていきたいですし、キャストの方も変わるので、(お芝居も)おのずと変わると思います(笑)一つの新しい作品として、気軽に観にきてください。まだ稽古は始まっていないですけど、前回は本当に必死にやってきたんで、今回も観てもらいたい、観てもらわなきゃ、伝わらないですし、本当に観てもらいたい作品なので、是非!

玉城:はい、朔ちゃんが言った通りなんですけど、今回新しいキャストさんが加わってこれから稽古をやるにあたって、初演メンバーで、今回出ていないキャストの想いを受け継ぎ、新しい作品を作るという気持ちで、またゼロから作る作業をしていきます。これからアニメ、マンガ、初演、とは違った舞台『曇天に笑う』として、観て損はさせないように稽古をしていくので、是非、劇場に足を運んで頂けたらと思います。

Q 再演と言ってもキャストも変わって新しい……。

玉城:そうです!新しい舞台『曇天に笑う』にしたいと、思います!前回出てるキャストさんも観にきやすいように、わかんないですよ、蓋をあけたら全然違う演出かもしれないですし(笑)。

Q そこは観てのお楽しみ。

2人:観てのお楽しみ!自分たちもやってからのお楽しみ!

(注)『GO』は2000年に講談社より発行された金城一紀の小説で、同年直木賞を受賞。翌年に2001年10月にこれを映画化した作品が公開されたが、こちらも数多くの映画賞を受賞した。

玉城裕規
玉城裕規(たまき・ゆうき)
1985年生まれ、沖縄県出身。近年の主な舞台出演作は、『ロボ・ロボ』『カレーライフ』『メサイア-鋼ノ章-』、朗読劇『僕とあいつの関ヶ原』『俺とおまえの夏の陣』など。

百瀬朔
百瀬朔(ももせ・さく)
1994年生まれ、兵庫県出身。近年の主な出演作は、映画『悼む人』『劇場版 仮面ライダー鎧武 サッカー大決戦!黄金の果実争奪杯!』、舞台『灰色の蝶』『たぶん世界を救えない』など。

[出演]
玉城裕規 (曇 天火[曇天三兄弟の長男])、植田圭輔( 曇 空丸[二男])、百瀬 朔 (曇 宙太郎[三男])、細貝 圭 (安倍蒼世[犲隊長])、 入来茉里 (佐々木妃子(犲隊員)) 、福井博章( 鷹峯誠一郎[犲副隊長])、 横山一敏(犬飼善蔵[犲隊員])、 蒼山真人( 武田楽鳥[犲隊員])、今奈良孝行( 赤松一郎太[山賊])、秋元龍太朗 (青木弥二郎[山賊])、兒玉宣勝( 織田千代長[獄門処看守長])、仁藤萌乃( 錦[町娘])、橘輝(大吾[町人])、小澤亮太( 風魔小太郎[獄門処の住人])、松田 凌( 金城白子[風魔一族の生き残り])、 藤木 孝( 岩倉具視[犲の創設者])

[公演データ]
原作: 唐々煙(マッグガーデン刊)
脚本: 高橋悠也
演出: 菜月チョビ

■東京公演
2016年5月27日~6月5日
天王洲 銀河劇場

■大阪公演
2016年6月10日~6月11日
梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
http://www.vap.co.jp/dontenniwarau/theater/
©唐々煙/マッグガーデン

取材・文/高浩美

■過去リリース情報
https://stagenews25.jp/?p=1292
https://stagenews25.jp/?p=2217

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